日々是平穏

こちらは黒辺あゆみが創作について語るブログです

「う~ん……」な作家な阿部先生

前回からの続きです。

 

私が首を捻った作家さんとは、烏が人になる世界を描いた作家さんなんですがね。

そう、阿部智里先生です。

あ、ちなみに阿部先生をディスるつもりはないですから。

誤解を避けるためにも、ぜひ最後まで読んでいただけると助かります。

 

失礼ながらこのシリーズを知ったのは結構最近で、新聞の広告欄でした。

本屋へ行けばたぶん平台に積んであったので目立ったのでしょうが、最近本屋って行かないのよね。

ネットで全て片付くから。

 

んで、その頃は週に二度はババン! と新聞で結構大きく宣伝されていて。

当時締め切り前の追い込み真っ最中だった私は、締め切りが終わってから本屋へ探しに行こうかな、とか思ってました。

で、そんな時。

新聞に阿部先生のインタビュー記事が載りました。

自分的に噂の人だったので、「おおっ!?」とワクワク気味に呼んだのですが。

 

「この作品は私が小学生の頃から温めていた、完全オリジナルです」

「私は自分が生まれながらの小説家だと思っています」

 

ニュアンスは多少違ったかと思いますが、上記のような主張をされたんですよ。

ツイッターでもブログでもない、大手新聞のインタビュ―記事で。

私は失礼ながら「なに言ってんだコイツ?」となりました。

……阿部先生をディスるつもりじゃないけど、当時の正直な気持ちです。

前回も述べましたが、出版というのは編集さんとの共同作業。

なのに当時の私には、この記事が「全ては私の手柄です」という風に読み取れたのです。

新聞という校正が入った後の文章でのことでしたので、インタビューオリジナルではもっとアレな発言だった可能性もあります。

そして烏シリーズを読もうという気持ちが急速に萎みました。

そう、結局未だに読んでいません。

 そしてこの記事以降、あれほど見かけた烏シリーズの広告攻勢がパタリと止みました。

悪い意味で反響があったんだろうなぁ(苦笑)

 

ですが、今改めてあの発言の背景を調べてみると、「そうだったのねぇ」となりました。

 

大前提として、阿部先生は大変ストイックな作家さんだと思うんです。

小学生の頃にハリーポッターシリーズに出会い、「私もあんな物語を書きたい!」と思って小説家を志す。

私が創作を始めたのは中学になってからで、比べれば実に早熟ですね。

それから「こんな話はどうかな?」と考えてお子様な阿部先生なりに考えたのが、烏シリーズの前身のお話だそうで。

つまりは烏シリーズは処女作なんですね。

ここが重要ポイントで、初めて完結まで書き終えた作品って作者にとって特別な思い入れがあるんです。

今では結構売れっ子な某作家さんも、処女作が賞に落選した時は編集さんに当たり散らしたという話をしてましたっけ。

そのくらいに初めて完結させた作品は思い入れが強いってことでした。

私が書いたのは中学の頃、小説とも呼べないお粗末な出来だったのですが、それでも内容はハッキリ覚えてますもん。

で、阿部先生はその処女作な烏シリーズをもっと深く書きたいと思い、そのために大学の専攻も選んだくらいのストイックさ。

そしてとうとうその努力が実を結ぶわけです。

おめでとう、阿部先生!

と、ここまでは感動話ですがね。

 

ここで話は変わって、烏シリーズの感想を見ると、否定的なコメントでよく見るのが、「十二国記じゃないじゃんか」というもの。

私は中身を読んでないので、公表されているあらすじだけしか知らないのですが、烏シリーズは小野不由美先生の十二国記とは全く似てないというか、別物の作品に感じます。

動物が人に変わるという共通点はあるかもしれませんが、そんなものは他にもあるでしょう。

中華風と和風、アジアンテイストで括るのも無理がある。

ではどこから「十二国記」が出て来たのか?

調べると、どうも本の販促での煽り文句らしいんですよね、十二国記に匹敵するハイファンタジーっていうのが。

私、これは出版側のミスリードな気がしてなりません。

 

食レポでも、食べ物を食べ物で例えるのは良くないと聞きます。

同じように、本を別の本で例えるのはいかがなものか?

阿部先生自身が小野不由美先生のファンらしいので、多少は作風が似ているのはあるかもしれませんが、そんなものはよくあること。

たぶん、煽り文句で「十二国記」が出て来なければ、読者は比べもしなかったでしょう。

悪い言葉で言えば、「十二国記のパクリ」扱いを受けることもなかったはず。

 

しかし一方で。

 

十二国記」の名前を使わなかったら、初っ端からここまで本が売れただろうか?

 

あらすじや感想を見ると、あまり盛り上がるストーリーではない様子。

どちらかと言うと、ミステリー要素が強いようです。

なんと言っても松本清張賞受賞作ですから。

作品を何作か読み進めて、「ああそうか!」となるのがハマる作品らしいです。

私、読んでませんけれども。

こういうテイストの作品って、いきなり売れるんじゃなくてジワジワ売れていくものではないかと思うんですよね。

謎が解けていくたびにSNSなんかで感想が述べられ、噂が噂を読んでいつのまにか売れました、的な。

阿部先生側としては、そちらの方が納得できた売れ方だったような気がしてしまいます。

でも、出版社は手っ取り早く売れて欲しかった。

その起爆剤が「十二国記」だったのではないかと。

というか、本の表紙や帯のデザインは作者本人にも確認するはずです。

阿部先生はそれを見た時、「尊敬する小野不由美先生と肩を並べられるなんて」と単純に感激したのかもしれません。

ですが「十二国記」の名前を出されれば、読者が比べてしまうのは当然ですよね。

そして「全然違うじゃないか、詐欺だ!」という感想が出て来る。

 

先でも述べましたが、小説家にとって処女作は特別。

それを「十二国記のパクリ」的扱いをされるのは、それはもう同情します。

阿部先生が小野不由美先生を尊敬しているのとは、違うベクトルの話ですから。

しかも烏シリーズを読んでもいない人まで、感想欄を見ただけでパクリ扱いしている様子。

読んでいない私が言うのはなんですが、読んでいない人は黙ってましょうね。

だから阿部先生が直接発言の機会を得たので、思いの丈が爆発してしまったのかなと、例のインタビュー記事に思を馳せるわけですよ。

 そりゃあ「これは私のオリジナル作品ですから!」と言いたくなるでしょう。

 

以上、烏シリーズを読んでいない私の意見でした。

あくまで私個人の意見なので、異論はあるのは承知してますとも。

 

そして烏シリーズではない新作を発表した模様。

阿部先生、おめでとうございます!