もう来月頭で免許の期限が切れるウチの父。
後期高齢者な父には、前回の免許更新を最後にしてもらおうと、家族で決めていました。
でもね、新聞やテレビでもしばしばネタになっているけど、免許を返納してもらうって大変ですよ。
まず大前提として家族が理解しておかなければならないのは。
後期高齢者世代にとって、免許というか、車に乗るということは特別な行為だということです。
戦後の復興から高度経済成長期に青春を送った人たちですから。
幼い頃は、車とは米軍のカッコいいお兄さんが乗っているもので。
それが数年後に自分が運転できるようになるなんて! っていうカンジでしょね。
私たちに置き換えて考えると、なんだろう。
金持ちの乗り物だった自家用小型飛行機が、庶民でも買えるようになったみたいな?
そりゃあ、飛行機乗り回せるなんて自慢だし、こんなステータスは手放したくないよね。
年を取って乗るのがしんどくなっても、「飛行機乗れるんだぜ!」って言えることが大切。
それが後期高齢者にとっての車の立ち位置でしょう。
そう考えると、安易に「もう年なんだから、車はやめて免許返したら?」って軽く言ってはいけません。
我が家は前回の更新時から、ジワジワと話をしました。
三年がかりで。
今のところのポイントは、上から目線で「あなたのためを思って言っているの!」という言い方をしないことかな。
「もしどこかで事故を起こしたらと思ったら、私たちは心配で仕方ないの」
という言い方を繰り返しました。
それに一度や二度の説得で頷かせようとしないこと。
手放したがらないのが当たり前なのです。
我が家では父は免許を更新したものの、胃がんの手術をして以来体力が衰えたせいで、運転は全くしていません。
出かけるときは兄の運転で出かけていきます。
本人も運転がしんどいのは本当なので、これについては文句を言わない。
内心では、「もう運転は無理だろうな」と考えていると思います。
でもたまに出かける時に、「運転の練習がしたいからハンドル握らせて」と言い出すんですよ。
けれどこれは、運転を許されるか、こちらの気持ちを図っているのだと思います。
我が家では、「なにかあったら一蓮托生で死ぬのは嫌だ」と言って、絶対にハンドルを渡しません。
ちょっとの間はブーブー文句を言いますが、しばらくすると「自分が悪かった」と思って反省します。
こうして、「免許を手放す」「やっぱりイヤだ!」を繰り返して、本人も気持ちの整理をつけていくのだと思います。
でも、本人も返納に気持ちを固めつつあったつい先日、事件がありました。
通っている病院で隣り合った同世代のオジサンとの会話で、「免許のことで家族にとやかく言われる筋合いはない」的なことを言われ。
「免許とっちまえよ」とけしかけられたそうなのです。
父は昔から、ちょっと悪ぶった口の強い人に弱い傾向がありまして。
いいカンジに乗せられた父が、なんと自動車試験場に電話をして、外から携帯電話で高齢者講習の予約をしてしまったのです!
父はこの時、別になにか意見を求めていたわけではなく、ただ誰かに気持ちを愚痴りたかっただけだったようです。
これは別に悪いことではなく、気持ちの整理の方法としてはアリでしょう。
けれど推測するに、どうやらその話しかけたオジサンは、免許返納バトルを始めたばかりだった模様。
自らの荒ぶった気持ちを父に押し付ていたのでしょう。
でも一晩寝たら、父はやっぱり自分が悪かったと思ったらしく。
母がもう一度話をすると、講習はキャンセルしていいと言ったので、即キャンセルです。
そもそも父は、一人で免許更新センターに行く体力気力があるかも怪しいんです。
なにせ、更新センターまで車を一時間走らせなければなりませんから。
父はその後、免許のことはなにも言いません。
教訓、返納のことで愚痴る相手は、くれぐれも選んでもらいましょう!
本人が身を切るような思いで気持ちを整理しているのを、台無しにする人がいますから!
愚痴るなら、すでに返納を済ませた経験者がいいです。
気持ちをよく汲み取ってくれますし。
家族としては「自主返納してもらったら、自治体から補助とか出るのにな」と思わなくもありません。
けれども、父が自ら免許を手放すことがどうしてもできないのであれば、期限切れを待って、半年してから免許を返しに行くのも手だと思っています。
半年過ぎれば試験免除はなく、一から免許を取り直しですから。
そうなると受かるはずもありませんし。
まあもしかしたら、期限切れまでの数日の間に、しれっと返納に行くかもしれませんが。
とりあえず、来月頭を過ぎれば車に乗れなくなりますから。
そうなったら、「父よ、今まで運転お疲れ様」の会をしたいと思います。